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越えて 跳び箱
2023/02/17
 先日の小中一貫研究協議会はお世話になりました。「体つくりの運動遊び」という,小学校低学年に特化した提案にはなりましたが,小学校・中学校のどの学年でも重要になると思われる「遊び」の概念を実践含めて提案させていただきました。あわせて,本校の研究主題の「well-being」につながる「エージェンシー」の概念についても,詳細に提案させていただきました。御都合がつかず参加は叶わなかったけど,気になられるという方は遠慮なく本校までお問合せいただければと思います。

 さて,研究協議会が終わっても毎日学校は行われます。ほっと一息ということもなく,毎日子どもが楽しいと思える体育ができたらと思いながら実践を積んでいます。

 今回のトピックスは,「器械・器具を使っての運動遊び」についてです。跳び箱を使った運動遊びを行いましたが,低学年の学習はおよそ,基本的な動きを身に付けることが目標になっているものが多いです。指導要領を見ると,楽しさに触れながら身に付けられるとよいと考えているのであろうと読み取れます。解説編を読むと詳しく載っていますが,資料というイメージで考えておくとよいです。

 つまり,体育の学習はもっと自由でよいのではないか?というのが正直な感想です。跳び箱といえば開脚跳びができること,縄跳びといえば二重跳びができることと言ったようなバイアスを脱却した授業で,子どもが体育を楽しい,運動が楽しいと思えるとよいなと考えています。そうはいっても,私も以前は研究会に参加しては,素晴らしい場作りを見て,こんな場を作ってみたいと思ったり,目の前の子どもが「できる」ようにどんな場を作ればよいのかといった楽しさが基になる授業を考えられていなかったように感じます。

 二度目の1年生をもたせていただき,「遊び」を勉強していくと,体育はもっと子どもに任せることができるのではないかと考えるようになりました。研究協議会で提案させていただいたように,今回の単元も子どもに任せられると思うところは任せた実践になっています。

 跳び箱の学習では,踏切り,着手,着地の大まかな三つで捉えて学習を進めます。全てつながってくるのですが,それぞれを切り取った動きとして定着し,中学年以降から自由に引き出せるようにしておきたいなと思います。教師が「手を着くときはこんなふうに」「踏切りはこうやって」といったように示範をしたり,させたりするのもよいのですが,目指す動きが提示された瞬間に,それができるようにという思考になるのかなとも思います(もちろんそれを狙って提示することもあります)。

 最初こそ跳び箱の位置やマットの位置,何段で行うかといったことを指示しましたが,2時間目からは,楽しくするために位置や高さを変えてよいと場作りを任せました。「跳び箱が低すぎて乗りにくいから,高くしたいね」「向きを変えると足を開いて乗りやすいと思う」というように,自分たちなりに跳び箱の位置や高さを工夫していました。マットも,跳び箱の後ろだけでなく,跳び箱同士をマットでつなげてコースのようにする様子も見られました。授業の途中に,ウレタンマット?をステージに付けて置いて,ステージから跳べるようにすると大興奮で跳んでいました。時間が進むにつれて,いろんな跳び方が出てきます。場所の工夫,動きの工夫,様々な工夫をする中で,自分がやってみたい動きや友達がやっている動きを目指すようになっていくと思います。そこで,子どもはできるようになりたいと思うのではないでしょうか。

 「遊び」や「エージェンシー」を核にした学習を作っていく中で,子どもに権限を譲渡し,創造し,技能を向上していきたいと思えば,子どもは本質に沿った「できる」を目指していくのではないでしょうか。「できる」を目標にするわけではないと言いますが,やはり運動を楽しむうえでは「できる」を目指していくことが必要です。子どもの思考の中のどこに「できる」が位置づいているのかというのを指導者が捉えてくことがとても大切になると思います。

 今年度も残りあと2か月を切りました。学年が変わっても,運動を楽しみ,体育が好きな子を一人でも増やせたらいいなと思っています。

体つくり運動(小中一貫研究協議会)
2023/01/20
 いよいよ本格的な寒さが襲ってくる季節になりました。日によっては暖かかったり,突然寒くなったりで体調を崩しそうですが,皆様いかがお過ごしでしょうか。

 今回は,1月27日(金)に行われます小中一貫研究協議会で提案させていただきます,体つくりの運動領域の実践について紹介させていただきます。

体つくりの運動領域は,大まかに「ほぐし」と「動きづくり・高め」に分かれています。前者が心と体との関係について気付くことができるように発達段階に応じて指導を行います。動いてみて気持ちはどうだったか?どう感じたか?ということから,心と体がつながっていることについて気付いたり,友達と関わる楽しさや,よさを認めたりすることができることを目標としています。後者は,他の運動領域では扱いにくい様々な動きを取り扱います。低・中学年の段階では,体の基本的な動きを幅広く身に付け,運動の畑づくりのために畑を耕すようなものだと考えられています。

今回は「多様な動きをつくる運動遊び」で実践を行いました。本校の研究主題であるwell-beingにつながる学びから,エージェンシーを育むという視点も含め単元を構想しています。

エージェンシーについては何度か説明をさせていただいておりますが,授業の中の権限と責任を譲渡することで育まれると言われています。よくやってしまう失敗としては,他の領域で難しさを感じた動きを取り上げ,他の領域の補充的な単元にしたり,スポーツテスト前に,スポーツテストの種目等を練習する時間としてとったりすることがあります。他には,こちらが提示した運動を繰り返し,「できる」ように練習していく時間になることも考えられます。なぜ,こういった失敗になってしまうかというと,体つくりの運動領域は,系統性や基になる運動を感じ取りにくいが故に難しさを感じる領域というのが一つの理由にあるのではないでしょうか。しかし,逆に考えると,子どもの創造性を生かしやすい領域になっています。

そこで,今回は,こちらが場を与えすぎずに,子どもが自分なりの楽しさに合わせて運動遊びを工夫することができるようにしました。これは,エージェンシーを育む視点で考えると,授業内での活動を工夫できるという権限を譲渡したということになります。遊びの視点で考えると,自由で創作的な活動を行っていると見ることができます。また,well-beingの大きな視点で考えると,子どもがフロー状態に陥ることが大切です。少し前に流行った言葉を借りると「ゾーンに入る」というような状況ですね。これは,課題と自分の技能等がよいバランスになっていることが求められます。つまり,「できるかできないかわからない」状況です。しかし,今までの画一的な指導では,子どもそれぞれの技能差に合わせた課題の設定が難しいと感じました。体つくりの運動領域では,自分はこの運動ができるが,できる運動をずっと続けなければいけないといった状況や,まったくできないのにひたすら取り組まないといけないといった状況があったかもしれません。

こちらが場の設定を工夫して,魅力あるものにするのはとてもいいことだと思います。しかし,その場が完成されすぎていることも一考の余地があります。そして,様々な教科を担当する小学校の教員は,場づくりに時間をかけすぎることもできないのが実情だと思います。そこで,子どもが場から働きかけられ,楽しそう!と思うが,工夫をする余白は残されているという場が必要ではないかと思いました。
ですが,正直それを考える時間もないといった方もいらっしゃると思います。ただ,体つくり運動領域は,資料がとても充実しています。文部科学省のパンフレットや,各県が作成しているハンドブック等を活用してみましょう。そして,その先の工夫を子どもに委ねてみてはどうでしょうか。

教師が課題を動きや課題を提示し,子どもはそれを達成していくという,教師→子どもの一方向型から,教師←→子どもの双方向,そしてその先の子ども→教師まで見据えていけたらと思います。

詳しい提案や授業の様子は1月27日(金)の小中一貫研究協議会で提案させていただきます。オンラインの詳細は,参加申し込みをされた方に近日中にお送りしますが,申し込みが遅れた場合は直接学校に御連絡いただければ対応しますので,木田まで御連絡ください。もし,当日の御都合がつかないけど気になる!という方は御連絡ください。

それではよろしくお願いいたします。

ゲーム単元 その2
2022/12/16
 低学年のゲーム系,どのように行っていますか?低学年のゲームはボールゲームと鬼遊びに分けられます。それぞれの目標を見てみると

ボールゲーム:ボールゲームでは,簡単なボール操作と攻めや守りの動きによって,易しいゲームをすること。
鬼遊び:鬼遊びでは,一定の区域で,逃げる,追いかける,陣地を取り合うなどをすること。

上記のような知識及び技能の目標になっています。
皆さんそれぞれ,単元構想の道筋はあると思いますが,私はいつも「運動の面白さ」→「知識・技能」の順で運動を捉えます。そして,知識・技能が手段になるようなゲームもしくは運動の場を考えていきます。

そこで,いつもわかっているようでわかっていなかったところを,しっかり調べようと思いました。何かというと,「易しいゲーム」「簡易化されたゲーム」というものの違いです。不勉強でして,今までなんとなくで学習を進めていました。調べてみると,以下のようになっています。

「易しいゲーム」:ゲームを児童の発達の段階を踏まえて,基本的なボール操作で行え,プレイヤーの人数,コートの広さ,ネットの高さ,塁間の距離,プレイ上の緩和や制限,ボールその他の運動用具や設備などを修正し,児童が取り組みやすいように工夫したゲームのこと。
 「簡易化されたゲーム」:ルールや形式が一般化されたゲームを児童の発達の段階を踏まえ,実態に応じたボール操作を行うことができ,プレイヤーの人数,コートの広さ,塁間の距離,プレイ上の制限,ボールその他の運動用具や設備などを修正し,児童が取り組みやすいように工夫したゲーム。

 それぞれ指導要領解説を引用しています。
 簡易化されたゲームは一般化されたものを基にするというところと,緩和が抜け制限のみになるところが大きな違いです。なので,低学年から中学年に向けて少しずつ一般化されたゲームに近づけるようなゲームを仕組み,高学年は,中学校に向けてより競技に近くなるようなイメージでしょうか。あまりこだわりすぎると,児童の実態に合わないゲームになりますので,少し簡単にゲームを仕組むとよいかもしれません。

 今回のゲームですが,「簡単なボール操作」を「ボールを蹴る・止める」と設定しました。「ボールを蹴る・止める」が手段になるようなゲームということで,はじめは守りゾーンをつくり,攻めが蹴ったボールをそのゾーン内で止められるかというルールで仕組みました。通り抜けると得点,止めたボールがゾーンから出ても得点ということにしましたが,なかなか狙ったところに蹴る必要性を感じ取れず,とにかく蹴りたい(強く)という様子でした。また,攻守がはっきりと分かれすぎているところも子どもの中の問いが多くなり難しい様子でした。子どもの実態をしっかりと見極められていないことに反省です。

 そこで,ゲームを大幅に変え,バランスボールをコート内に置き,ボールを蹴って,相手ゴールに転がすというゲームにしました。人数は5人ずつ,ボールは各コートに6球,とにかくバランスボールを狙って蹴り,相手コートに押し込もうという意識です。「狙って蹴る」ことは自然と子どもたちのなかに意識が芽生えました。ゲームが進むにつれ,「ボールを早く止めて蹴るにつなげることも大切」ということに気付いたようでした。相手が蹴ってバランスボールに当たらなかったボールは真っすぐ跳んできますので,それをすぐに止め,蹴ることができると有利ということです。この時間はとにかくゲームをやってみる時間でしたが,次の時間には「どんな動き(技能)が大事か」を考え,自分たちで練習方法を考え,実践してけるようにしたいと考えています。

 低学年のゲームは,構想が難しいですが,遊び!という意識でとにかく楽しいゲームを仕組めるといいなと感じました。

 1月27日には小中一貫研究協議会が行われます。オンラインでの開催となりますので,御都合のつかれる方は是非御参加ください。領域は「体つくり運動〜多様な動きをつくる運動遊び〜」です。よろしくお願いいたします。

持久走大会へ向けて
2022/11/17
 最低気温が10度を下回り,本格的に冬が始まったように感じます。今年度も持久走のシーズンがやってきました。本校は,昨年度から持久走記録大会を「マラソン大会方式」から「持久走方式」に変更をしました。学習指導要領の内容や,運動への楽しい取り組み方も考慮し,「決まった距離をどれくらいの時間で走れるかを競うマラソン大会方式」から,「決まった時間を一定の速さで走る持久走方式」に変更するに至りました。「折り返し持久走」「ねらい幅跳び」「8秒間走」などを考案された山本貞美先生の実践を参考にさせていただきました。詳しくは,このトピックスをさかのぼられて,2021年11月のものを見ていただければと思います。

 昨年度の実践では,50m走や100m走を全力で走り,そのペースで長い時間走ることができるかという課題設定をしました。しかし,短距離のペースで長い時間走ることができないと気付くことができても,どうすれば同じペースを守れるかを解決する場がありませんでした。そこで,今年は同じペースで走る感覚を身に付けることを目標に学習を仕組みました。

 今年度は1年生の担任をさせていただいておりますので,ペース走がどのようなものなのか,どんな課題で取り組むかということを確認し,学習を始めました。しかし,走ることも動くことも大好きな低学年の子どもなので,ついついスタートダッシュをきめてしまう子も多く,同じペースを守れない様子が見られました。そこで,以下のように学習を仕組みました。

(1)1分でどのくらいの距離走るかを決め,1コーンあたりの時間を逆算する。
    ※それぞれの実態から,コーンあたりの秒数を変えてみると良い。3ペース作ると選択しやすいように感じる。

1年生での例
・速いペース:1分で200m,2分で400m,4分で800m⇔1コーン3秒
・ゆっくりのペース:1コーン3.5秒(2コーン7秒換算)⇔2分で340m,4分で680m

(2)ペースを掴むために,ペースメーカーを置いて走る(1で設定したものを基準に)
  ・教員が時計を見ながら走る。どのくらいのペースが自分に合っているか見出させると,1コーンあたり何秒で走るかが決めやすい。
 
(3)1コーンあたりのペースを守りながら1分間走る
  ・コーンあたりのペースを自分で口ずさんだり,感じながら走り,ズレを埋めていく。
  ・この際,待っている別のペースの子に,コーンあたりの秒数を数えさせると,走っている子もペースを感じ取りやすい。
  (実際に走っていなくても,口に出し数えることで,リズム感が育成される。)
 
(4)2分間→3分間→4分間と時間を伸ばして走る
  ・分数が伸びてもペースが守れるか,きつければ違うペースを選択しても良いし,そのペースで走れるように練習をしても良いです。
   ※ペースが守れていないから練習するという学習課題にすると,やらされて苦しいマラソンと同じ。自分に合うペースにするためにどうするかを決めさせることが大切。

以上の流れで学習を仕組みました。低学年は,いくつかの定められたペースから自分に合うものを選んでいくという流れですが,高学年はいくつかの定められたペースから自分に合うようにペースを変えていくという流れを作っても良いように感じています

走・跳の運動遊び
2022/11/07
 二つ前のトピックスで,遊びについて書かせていただきました。
 今回は,遊びの要素に,2月に協議会で発表させていただきます内容を交えての実践を紹介できたらと思います。

 今回は,「走・跳の運動遊び」の領域です。この領域はなかなか難しいなと感じています。特に「走」の部分は,運動の根幹になるところでもありますし,走ることが様々な動きに派生する部分もあります。なので,「走」をどうやって意味づけするか?というところに難しさを感じています。

 それはさておき,今回は「跳」で単元づくりを行いました。中学年や高学年になると,「短い助走から踏み切って跳ぶこと」や「リズミカルな助走から踏み切って跳ぶこと」という知識及び技能の目標になります。低学年では「前方や上方に跳んだり,連続して跳んだりすること」という目標になりますが,踏切りの意識はもちろん,連続して跳ぶ中でリズム感を味わうことも大切だと考えています。しかし,踏切りとリズムを並列して課題意識をもつのは低学年にはなかなか難しいと感じます。そこで,今回は,とにかく跳ぶことを楽しみながら,特に踏切りを力強く,遠くに跳びたいと思えるように仕組めるといいなと考えました。

 ここで,本校の研究に関わる「well-being」のなかで,「エージェンシー」という概念について補足します。今回は,エージェンシーの育成も視野に入れて単元をつくりました。「エージェンシー」は「変化を起こすために,自分で目標を設定し,振り返り,責任をもって行動する能力」とされています。草津(2021)によると,「学びの構造とフレームを教育者が用意し,その構造の中で行われる学習活動の創造を学習者が『責任』と『権限』を持って行うことこそが,エージェンシーが形成される環境の一つであると考えられる」と述べています。また,「教師は教える者という立場ではなく,あくまでただの協働者でしかないのである。」とも述べています。もちろん,指導要領に沿い,学習を進めないといけませんし,全てを子どもに投げるのは,放任する授業になります。ただ,前回の「遊び」のトピックスでも書かせていただいたかもしれませんが,「遊び」には工夫の余地がないといけません。教師が主導し,用意した中で授業が進むことで,子どもが真に「遊び」,「well-being」に向かえるのか?ということですね。

 では,単元をどのように進めたかを説明させていただきます。
 単元の1時間目には,体育館で「ケンステップ」「ミニハードル」「平均台」「飛び乗り台」を準備し,意図なく体育館中にばらまき,「どうやって遊ぶ?」と聞きました。そうすると子どもは,「跳んだり,乗ったりしてみたい!」ということでしたので,安全面で注意することだけ伝え,とにかく好きに遊んでもらいました。1時間目の振り返りの時間に,「どんなところが楽しかったか」と問うと,跳ぶことや乗ること自体に楽しみを見出していました。そこで,「どんなところが楽しいの?」と聞いてみと,「跳べるか跳べないか」「乗れるか乗れないか」「届くか届かないか」という意見が出てきました。これは,年度当初から,運動は「できるかできないか」を楽しめるといいと伝え続けているので,子どもが見出したものではないのですが・・・。

 2時間目には,「跳べるか跳べないかを楽しむために,どんなことをしてみたい?」と聞くと,「自分たちでコースを作ってみたい!」「ゲームみたいにゴールできるかどうかやってみたい」ということだったので,レベルを分けた,誰でも自分が「できるかできないか」を楽しめるコースづくりをしました。この時間からは,少し用具の種類を減らし,跳び方も立幅跳びのようなものに制限しました。ケンステップをどのくらいに置くとギリギリ跳べるかを画策し,自分たちで作ったコースや,他のグループのコースを試しながら楽しんでいました。

 3時間目は,何人かずつのグループに分け,コースづくりを続けました。今回はクラスの中でバラバラにグループづくりをし,一緒になった友達とのコースづくりです。今回は,少し跳べる距離が違う友達もいるということで,ケンステップ同士を遠くしたり,近くしたりしてコースを作りました。そうすると,跳べない子ももちろんいます。そこで,一度集めて,「できないなと思っている人もいると思うけど,どうしたらいいか」と聞きました。すると,「跳び方にポイントがあるから,遠くまで跳べる跳び方をするといいよ」という意見が出ました。「遊び」も体育も,技能をひたすら追い求めるものではないですが,技能を高めたいと思うタイミングが出てこないと面白くなくなってしまうものです。同じ技能を追求するにも,子どもたちの中でどういう位置づけになっているかというのはとても大切です。「どうすればコースをこうりゃくできるか」とめあてを設定すると,「手を後ろから前に勢いよくふる」「手と足を合わせて跳ぶ」「膝をまげてから,伸ばしながら跳ぶ」と動きのポイントがでました。じゃあ,それを意識しながら攻略してみようかと活動が続きました。

 ここから,まだ単元は進みますが,跳ぶ動きを楽しみながら身に付けられているように感じます。「こうやって跳ばないといけない」ではなく「もっと跳びたいのに」「どうやったら跳べるの」から動きを模索する姿は1年生でも,遊びでももちろん見られるものです。技能が最終目標にあるのか,過程にあるのかでは,同じ身に付け方でも全く違う効果を発揮すると感じますし,転移するかどうかにも関わってくると思います。

 低学年の「遊び」をより充実したものにするために,「エージェンシー」の育成も意識しながら,運動を楽しみ,楽しむ過程で動きが身に付く授業を模索できたらと思います

ゲームの単元に入りました
2022/10/04
 夏休みも終わり一か月,少しずつ涼しくなり,体育の学習が行いやすい気候になってきました。

 1年2組では,1年生で初めてのゲームに取り組んでいます。まずは,ゲームにはどのような種類があるかを簡単に説明し,どんなゲームをするか話し合いました。

2月頃に行われる研究会でも触れると思いますが,『エージェンシー』を育成するためには,子どもたちが自分で判断する機会を増やすことが必要だと言われています。『遊び』の概念の中でも,全て決められた内容で行うものではなく,自分で意思決定したり,選択・判断したりできることが遊びを形づくるを言われています。

そこで,「タグ取り鬼」を思い返し,どのようなゲームができるかということを一緒に考えました。タグ取り鬼の面白いところは,「タグを取るか,取られないか」というところだと考えています。チャンピオンスポーツでいくと,ラグビーやアメフト等の陣取りのゴール型につながるのではないでしょうか。そこで,小学校では3つのゲームの型があること,その中からタグ取り鬼とつながるものはどんなものか。どんなルールで行っていくと良いかを話し合いました。ラグビーの試合動画も見せ,安全で楽しいゲームにするために,自分たちができるゲームということで「宝とりゲーム」の単元を設定しました。オリエンテーションを1時間しっかり座学で使うことになり,運動しなくて良いのか?というご意見もいただくかもしれませんが,運動遊びということなので,教師から提示されたものを行うだけでなく,どんなことがするか・できるか,どういうふうにしたいかということを考える過程に意味があると思います。そこで,教師がある程度は介入しつつ,ファシリテーターとして単元を作り上げるということがこれからの教育には必要なのかもしれません。まだまだ始めた段階で,引っ張りすぎたり,任せすぎたりで上手くいかないこともありますが,日々実践を振り返りながら,研究を進めていけたらと思います。

実際に単元が始まると,「どうしたら宝が多くとれるか?」という疑問が出てきます。単元の初めには,宝が多く取れたら勝てることから,タグを取られずに進むと良いことにつなげ,「タグを取るか,取られないか」を競うゲームだということを確認しました。やりすぎではと感じますが,ここまで土台を揃えておくと,なにを学習するかということが何度も確認しなくとも共通認識としてもつことができます。

単元の中で宝が取れないので,どうすれば良いかと各チームで話し合った結果,「囮を使う」「取られないような動き」という二つがでました。もちろんタグを取られないための動きですが,『スペースを作るため』ということも確認しました。「取られないような動き」は個人の動きですが,引き付けたり,方向を変えたりということでチーム内でも共有しながら取り組んでいました。「囮を使う」については,どこにスペースを作るかをまず考えていました。スペースを作るということは,反対に守備が集まる空間を作らなければいけませんので,そこに囮が走りこめばよいということで作戦を立てていました。しかし,囮が囮にならず宝が取れることも少なくありません。結局囮が取れるが,スペースに走りこむ子が取れず,宝が集まらないゲームが見られました。そこで,「囮はどんな風に動いているのか」と問うてみたところ,「どんどん宝を取るようにしている」という認識が多かったので,「なんのために囮を作っているのか考えたほうがいいなあ」と伝えると,今まで8人チームの中で6人囮だったチームも,2人に減らしたり,1人囮で守備全員引き付け,空いたスペースに残りの7人が走りこむという作戦を作っているチームもいました。しかし,1人が囮だと,囮の動きがとても大事になってきます。次時からは,囮はどう動けば良いかという,「囮を使う」と「取られない動き」をつなげて授業を進めていけたらと思っています。

11月には,授業づくり研修会を行います。平日の午後,オンライン開催となりますが,御都合が合われる方は是非参加されてください。実践を見ていただくというよりかは,体育について一緒に考えるという会にできたらと思っております。よろしくお願いいたします。

「遊び」ってなにするの?
2022/06/02
 6月を迎え,教育実習も終わりを迎えようとしています。今年度もコロナウイルス感染症の影響で,例年よりも少ない人数の実習生を迎えての教育実習となっております。

 今回のトピックスは,教育実習の示範授業で行った,「マットを使った運動遊び」の単元のご紹介をさせていただこうと思います。
 低学年の体育科は,領域名に「遊び」がついています。低学年を指導される先生は,「遊び」とは何なんだろう?と一度は思われたことがあるのではないでしょうか。私も低学年二度目で,「遊び」を体育にどう取り入れるのか?といったところが不勉強であったため,文献研究を行ってみました。
 
「遊び」を辿ってみると,古くはホイジンガ著の『ホモ・ルーデンス』からきています。ホイジンガは,「遊び」の本質を「人を夢中にさせる」「面白さ」というふうにしています。そして,「遊び」と「真面目」は対立概念でなく,「遊び」に内包される形で「真面目」があり,「本気」で行われるからこそ「熱中」の言葉で表現できる状態に陥るとしています。
 
そして,このホイジンガの「遊び」観の功績を認めながらも,批判的に解釈し,新たな「遊び」観を提案したのがカイヨワです。カイヨワは,「遊び」を「自由で自発的な活動,喜びと楽しみの源泉」としています。ただし,強制されてするものでないことから,退屈・飽き・気分の変化に左右されてしまうとし,このような要素も含めて「遊び」であると解釈をしています。また,遊びを4つのカテゴリーに分類しました。
@「アゴン」…すべて競争という形をとる一群の遊び
A「アレア」…運命こそが勝利を作り出す唯一の方法である遊び
B「ミミクリ」…その人格を一時的に忘れ,偽装し,捨て去り,別の人格を装う遊び
C「イリンクス」…眩暈の追求にもとづく遊び
カイヨワは,遊びを上記の4つに分類分けを行いました。
その後,ジャック・アンリオやエリス,西村清和,大西鉄之祐らが遊びを定義していますが,それらは省略させていただきます。

 今回の示範授業は,「マットを使った運動遊び」において,「ミミクリ」の概念を用いた実践としました。簡潔に申しますと,マットの上で身近なものや動物になりきり,その遊びの中でマット運動に必要な動きを身に付けていこうという内容です。

 単元の流れとしては,オリエンテーションで,なりきれそうなものや動物を子どもから提案してもらい,それらにどうすればなりきれるか考えていくというものです。ここでは,こんな動きを身に付けるためにどうするか?といった問いよりは,どうすればなりきれるか?といった問いを大事にしました。一見すると表現遊びに近しいようなイメージをもたれると思いますが,指導者のもっている学習目標のイメージをマットに寄せておき,派生する問いとして,マット上での体の使い方を表出させよう意識をもつことが必要であると思っています。
 子どもたちは,様々なものや動物になりきる中で,「『ボール』と『だるま』の違いは何だろう?」「ボールはコロコロ転がるけど,だるまは戻ってくる感じがするよね」や,「亀はすごく体を低くして移動しているけど,ゴリラは腕や足を伸ばして移動しているな」といった気付きを表出していました。そういった気づきの中で,「じゃあ,どうしたらボールのようにコロコロと転がれるのだろう?」や「ゴリラになりきるには,腕を伸ばしたいけど,どうしても腕が曲がってしまうなあ」といった問いが出てきました。こういった問いや気付きを,授業中の対話や,本時終末の振り返りで「どこからそう思う?」「どうやったら動けるかな?」と問い返し,マット上での体の動かし方に意識を働かせるように単元を進めました。
 本時の活動としては,友達とペアになり,どんな動物になりきっているかを当て合うクイズ形式でサーキット型の場を移動していくようにしました。また,タブレット端末を用い,ものや動物の動画を自由に見ることができるようにし,動きのイメージをもちやすくすることができたと感じています。
 
 今回の課題としては,本時のなかの活動の自由度が高かったため,同じものになりきる児童がいたことや,当て合いっこの際に,とりあえず答えを言って終わりの様子が多かったことです。
 いろんなものになりきる手立てとして,毎回ものや動物が記しているカードを引いて,そこに記してあるものになるようにすることもできるのではないかと考えます。
 当て合いっこに関しては,必要感をもち,なぜそう思ったかを答える手立てが必要だと感じました。本時の振り返り活動にも通じることなので,また実践の上でいろいろと勉強していこうと思います。

 「遊び」の中にある「熱中」の概念はwell-beingにも繋がるものだと感じています。「PERMA」というマーティン・セリグマンが提唱している,well-beingに繋がる理論がありますが,そのうちの「Engagement」に当てはまるものだと考えています。ここは不勉強なのですが,この「遊び」の概念は,体育科の機能的特性とも繋がっていると感じます。小学校体育科の授業作りの根底として,低学年だけでなく全学年に「遊び」の概念を取り入れていく必要があるのではないかと思いました。
 11月頃に行う予定の「授業作り研修会」や「後期研究協議会」などで,このあたりをお話できればと考えています。

新年度スタート【体育科】
2022/04/14
 今年度も体育科を担当させていただきます。木田 雅大(きだ まさひろ)です。学年は1年生を担当します。どうぞよろしくお願いいたします。

 1年生では,今週は学校に慣れることを目標に登校しておりましたので,2時間授業で下校しました。学習はまだはじまっておりません。また,学習が始まりましたらここで発信させていただきます。

 さて,今年度は1年生の体育を担当しますので,「遊び」を中心に学びを進めていくことが求められます。では,遊びとは何をすればいいのか?と悩まれている先生もいらっしゃるのではないでしょうか。その辺りを中心に「遊びと学びの融合」を目指して学習を進めてまいろうと思います。

 昨年度行いました【well-beingにつながる学び(1期)〜教科等の本質に迫る授業づくりを通して〜】も引き続き研究を進めてまいります。「遊び」とwell-beingはどう繋がるのかを見出していけたらと思っています。

今年度から,【授業づくり研修会】という新たな試みが始まります。御興味のある方は,ぜひ御参加ください。一緒に体育科の授業づくりについて考えていきましょう。

小中一貫教育研究協議会(オンライン)の開催について
2022/01/20
2月11日(金)に,第1回小中一貫教育研究協議会(オンライン)を開催します。
 この研究期では,教科の本質に迫りつつ,well-beingにつながる学び方のモデルを提案したいと考えております。
 そこで,小学校体育部では,『ハンドベースボール』の授業実践を通して,子どもが「見つけ」「変える」授業モデルを提案します。

【well-beingとは?】
 本学園では,well-beingを「個人だけでなく,社会や地球環境まで含めた全体的に良好な状態」と捉えています。
 教科等の本質に迫る授業で身に付けた資質・能力を,人生において自在に発揮できる子どもを育成することができれば,社会が抱える複雑で困難な課題を解決していくことができ,well-beingの実現につながると考えています。

【well-beingの実現につながる力とは?】
 『OECD学習枠組み2030』や『Education2030ラーニングコンパス』によれば,よりVUCA(予測困難,不確実,複雑,曖昧)が進行する時代においては,「変革をもたらすコンピテンシー」「エージェンシー」「AARサイクル」などが重要であるとされています。
 その中で,体育部が着目したのは,「変化を起こすために,自分で目標を設定し,振り返り,責任をもって行動する力」,いわゆるエージェンシーというものです。このエージェンシーには目標としてのものとプロセスとしてのものがあります。今回は目標としてのエージェンシーを据えて構想しました。
 なぜエージェンシーを目標に据えて単元構想を行ったかというと,「新たな価値を創造する力」「責任ある行動をとる力」「対立やジレンマに対処する力」の変革をもたらす3つのコンピテンシーをベースに据えて学習を進めていくためにはどれか1つを目標にするべきではないだろうと考えたからです。では,well-beingを目標にするのは?とも考えましたが,1単位時間の授業や単元でwell-beingを実現するのは難しいだろうと感じております。「繋げる」というところをキーに学校教育が行われていくのではないかと考えています。

【学習モデルは?】
 ・ゲーム中心アプローチ
 ・アダプテーション・ゲームの2つを大きな手立てとして考えております。
体育の本質に迫り,well-beingに繋がる学習ということでこの2つはヒントになるのではないかと考えました。
詳しくは,当日にご説明させていただきます。

【体育科の本質に迫る授業とは?】
 本校の体育部では,他者と協働しながら運動の楽しさを見出したり感じたりする子どもを育成する授業を教科の本質に迫る授業と捉えています。
 本単元では,「点が取りたいが,すぐにベースにボールを送られてしまう。狙ったところに打つという攻撃の工夫が必要なのではないだろうか?」や,「点を取られないためにボールを早くベースに転送したい。すぐにボールを投げるために,ボールが飛んでくる正面に体を入れる必要があるね」という風に,ゲームという学習の状況から,必要な技能を見出したり,解決しようとしたりする様相が教科の本質に迫った子どもの姿だと考えています。子どもが体育科の学習の中で意味を見出し,追及していくことができる授業を構想しています。
 この体育の本質というところは,当日皆さんからも御意見いただければと思います。

 授業については,来週あたりに実施予定です。協議会は2月11日(金)です。
 皆様の御参加をお待ちしておりますので,よろしくお願いいたします。

山大連携学習!
2021/12/10
本格的に冬が始まり,外での活動が少し辛い時期になってきました。

休み時間に子供に誘われ外に出て,鬼ごっこをすると大汗をかき,半袖で走り回っています。子どもに毎日パワーをもらい楽しく学校生活を送っています。
ちなみに,先日子どもがクラス遊びを計画し,中々上手くいかなかったようで,終わった後学級で話し合いを自主的に始めていました。面白そうなので授業の時間でしたが少し置いて後ろの方で聞いていました。
 色々と話合いを進め,何とか解決の方法に向かい,新たな行い方を見出したようでしたが,その中で「おっ!」と思った言葉がありました。
 学級遊びの中でどんなことが上手くいっていないか?という質問を体育係がしました。よく出てくるもので「はさみうち」が話題に上がりました。「はさみうち」は卑怯だ!すぐに捕まるから面白くない!など様々な意見が出てきました。そんな中,ある女の子が「鬼ごっこは,捕まえること,捕まらないことが面白いんじゃないの?はさみうちは鬼が捕まえることを楽しむためにやっているし,逃げる側も逃げることを楽しむんだから!」と言いました。この言葉がきっかけで話し合いが終結したわけではありませんでしたが,聞いている立場のこちらの気持ちとしては,「運動の面白さを,休み時間何の気なしにしているものにまで転移できているってすごいなあ」と感じました。実際のところ,全員がこうして学習の中,休み時間の運動で面白さを捉えられているわけではありません。しかし,こうした運動の特性に気付く子どもをたくさん育てられると,生涯スポーツにも繋がるのではないかなと思いました。

 さて,少し長い余談でしたが,本題に入らせていただきます。
 僕が担任している3年生では,教科を交換していまして,2クラスともの体育をもたせていただいております。山口大学の斉藤先生とゼミ生である学生とコラボして,ベースボール型の学習を始めました。
主に「バットで打つ楽しさ」に目標を置いた実践で案を頂きました。単元の2時間が進んだところで,御紹介させていただければと思います。
主なゲームの内容としては,バットを使う,攻撃は打ったあとにベースを回ってくる,守備位置は決まっている,守備はボールを持ってアウトゾーンに入るというところです。しっかりとベースボール型の特性は残し,打つ楽しさを味わわせる内容になるのかなと楽しみでした。

まず,1時間目は,記録を取りました。バットを使ってティー台にあるボールをどれだけ飛ばすことができるかという活動です。内容は割愛させていただきますが,子どもたちは「めっちゃ飛んだー!」「強く打ったのにすぐ地面に着く」「上に高く上がってしまう」など感想を述べていましたが,バットを使って打つことにとても楽しさを感じているようでした。

次に,本日2時間目を行いました。今日はバッティングゲームとメインゲームを行いました。授業の最初に,学生から「チャージをして打とう」というポイントを示していただきました。子どもは,思い思いチャージしておりました。しっかりと軸足に体重をかけ,体重移動の力を用いてバッティングをしていました。両足を地に付けて,手だけで振るイメージが強かったですが,チャージという言葉でこんなにも体重移動を意識することができるのだと驚きました。そして,メインゲームを行いましたが思いのほか強い打球が飛びたくさん点が入るチームや,上手く捕られてアウトになり点が入らないチームなど様々でした。学習の終わりに,得点はどうだった?という発問から「球がよく飛んで1点より多い点も入るかも」という思いが子どもの中に表れたようでした。そこで,次の時間にルールを変更しながらやってみようという風に2時間目が終わりました。

2時間一緒に行わせていただいてみて,技能の向上を目標として学習を組み立てても,しっかりとゲームへの思いが表出するのだなと感じました。バッティングの楽しさを味わわせようと思うと,バッティングが前面に出たゲームを作ることがありそうですが,しっかりと技能をゲームの中で生かしていくという意識でゲームを作ることが大事なんだと再認識しました。

まだまだ単元が続きます。子どもが「バットで打つ楽しさ」を十分に味わいながら,ゲームの特性を掴み,学習を進めて行けると良いなと思います。
山口大学の斉藤先生,学生の方々ありがとうございます。また,よろしくお願いいたします。

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