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跳び箱アイランド
2024/01/19
 新しい年が始まりました。と言っても,もう2月の方が近いくらいになってしまいました。12月が過ぎるのも早かったですが,この仕事をしていると1月から3月までがあっという間に過ぎ去ってしまいます。

 さて,前回に引き続き器械運動について書かせていただければと思います。器械運動の難しさや特徴は,前回書かせていただいたトピックスを参考にしていただければと思います。今回行った学習は,「跳び箱」を使った運動遊びです。他の鉄棒やマットを使った運動遊びと同じように,良くも悪くも「できたかできなかったか」がはっきりする運動領域です。みんなが取り組む技を簡単にして,できない子を減らすといった方法もあると思いますが,運動が得意な子にとって取り組みたくなる内容ではなくなってしまうのではないかと感じます。

 いつも同じことを書いていますが,「跳び箱を使った技を習得することが目的になるのではなく,何か楽しいコトをするために技を使う」といった体育の学習にできればと思っています。ゲーム領域であれば「その運動の楽しいコトは何か」から学習を始めるということで紹介させていただいています。跳び箱を使った運動遊びを行う中で,所謂,「技」をどう設定するかというところが難しいと思うのですが,低学年であれば指導要領の系統表にのっているような動きを満遍なく使うことができればよいと思っています。指導要領解説「体育編」でいうと,174ページからです。ベースになる技はそこに載っているものですが,これをひたすら行っていく学習ではなく,別の楽しいコトに向かっていっていたら,自然と技を使っていたという流れにしたいなと思いました。そこで,どういった場の設定をしたかというと,中心に宝箱を置きます。宝箱は紅白玉が入ったカゴです。その箱を中心として,8枚のマットで八角形を作りました。8枚のマットのうち,横の二枚に細いマットを垂直に付け,そのほかのマットには通常のマットを垂直に付けました。通常のマットには跳び箱を設置し,6個の跳び箱があるようになります。細いマットの向こうには,宝を回収する場所を作り,取った宝はそこに入れるようになります。(写真を参考にしてください)

 上に書いたような場所で,子どもたちには,「跳び箱とマットの上しか通らずに宝を取ってくることができるか?」という問いかけをしました。低学年の跳び箱を使っての運動遊びの挑戦課題は「いろんな行い方で跳び箱の向こう側に移動することができるかどうか」となっています。この挑戦課題に,向こう側に行って宝を取るという付加価値を付け足しました。学習が始まっても,こちらからは「どのような動きで跳び箱を越えてね」とは伝えていません。動きについて子どもに話したのは,「怪我をするような危険な動きや,無理して行おうとすることはやめるように」ということだけ伝えました。実際に運動を始めると,開脚跳びをする子もいれば,上に登ってから下りる子,跳び箱に手を着いて,跳び箱の横を足を通して越える子等様々でした。宝がなくなったところで一度集め,「もっと楽しくするためにはどうすればいいかな?」と問うと,「跳び箱の段数を増やす」「跳び箱の向きを変える」等が出てきました。なので視点として「遊ぶ場の設定」ということで工夫をまとめました。その後,段数を高くするということで話がまとまってきたので,「高くなったら向こう側に行けなくなるかもしれないね。そういう時はどうするの?」と聞いたところ,「跳べなかったら,登ったりとか,色んな行き方をすればいいんだよ!」ということでした。「じゃあ,皆がどんな行き方をしているか知ることができると,もっと楽しくなるかもしれないね」ということで,「向こうへの行き方」という視点も作りました。

 単元のはじめは,振り返りに「跳べなかったので残念でした」と書く子もいましたが,向こうへの生き方という視点を定めたことによって,「高い段でも,いろんな方法で越えれたのでよかったです」という振り返りに変わっていました。いろんな方法で行けるようになると,開脚跳びに挑戦しようという子も出てきます。しかし,開脚跳びをしていないからといって恥ずかしがったり,できないの?と聞いたりする子もおらず,どんどん跳び箱を越えるために運動に取り組んでいる様子でした。

 場所の工夫としては,「段数を増やす」といった意見が多く,どんどん高くしたいという流れになっていました。しかし,「高くして楽しい人と,高くなって楽しくない人がいるかもしれないから,高いのも低いのもあるようにできるといいよね」といった意見が出てきて,縦向きの跳び箱は4〜6段,横向きの跳び箱は5〜7段に変更することになりました。こうしたことで,高い段で挑戦してみて,難しかったのでもう一度低い段で行って確認するという姿も見られました。その後,「高いところにはロイター板を置いてみてもいいのでは?」という意見から,縦向き・横向きのそれぞれ一番高いところにだけロイター板を設置しました。その他にも,着地するところにケンステップを二つ置いて,跳び越えた人と跳び箱の上から跳んだ人それぞれが着地する場所を作り,そこに向かって下りるようにしようといった工夫を行いました。向こうへの行き方の工夫としては,上にも書かせていただいたようなものが出てきて,それを全体に共有して試してみるといった流れになりました。

 このような流れで行ったのですが,良かった点として,怖がることなく運動に取り組めたことです。どのような行い方でもよかったことで,まずは自分のできそうな動き方から始め,跳び箱に慣れたころに挑戦していくという流れが作れたからだと思います。子どもそれぞれで慣れるまでや,どういったことができるかが違うので,感覚づくりを一斉にするよりも自分のペースで跳び箱にしっかりと慣れることができたのではないかと感じました。また,技をやらされているという感覚が薄まるので,より自分事として運動に取り組んでいるように感じました。
 課題点としては,特定の動きから広げられないこともあることです。今回見ていても,いろんな高さの跳び箱に,同じ行い方で取り組んでいる様子が見られました。挑戦の仕方として良い姿だと思いましたが,もっと様々な行い方で3年生からの跳び箱の学習につなげるためには,より広がった動きの中で遊びに取り組めるように,友達と伝え合ったり,ゲーム性をもたせたりして様々な行い方で向こう側に行けるようにできると良いかなと感じました。まだ単元が残っていますので,次時から動きを広げながら楽しく跳び箱を使っての運動遊びに取り組めるようにできたらと思います。

ペース走・鉄棒について
2023/12/11
 今回は「持久走」「鉄棒」の二つを書かせていただきます。

 持久走シーズンがやってきました。本校での行い方を「距離を決めてどれだけ早く走れるかを競うマラソン大会方式」から,「時間を決めてどれだけの距離を走れたかを記録する持久走方式」に変えて3年目になります。指導要領には「無理のないペースで」という記述もありますので,「ペースを守って決められた時間走ることができるかどうか」が楽しめるように,毎年試行錯誤しながら取り組んでいます。

 昨年度までの行い方を変えた経緯や理由,学習での取り扱い方はトピックスをさかのぼっていただければと思います。今回は,昨年度との変更点とその理由をお伝えできればと思います。

 行い方を簡単に説明しますと,4分間の中で自分のペースを決め,時間が経った時に止まった場所でペースを守れていたかどうかを確認するようになっています。グラウンドが200mトラックになっていますので,10mずつコーンを置き,どこのコーンで終わればピッタリなのかを確認します。昨年度までは全員が同じ場所からスタートし,ペースによってそれぞれゴールが違うというものになっていました。しかし,この行い方ですと自分がどのコーンでゴールだったのか分かりにくいことや,保護者の方が見に来られても,お子様がペースを守っているのかが分かりにくいということもあるのではないかと思いました。

 そこで,スタート位置をペースによって変え,ゴールが全員一緒になるように変更しました。こうすることで,子どもも保護者の方も止まった場所でどれだけズレているかが分かりやすくなります。〇周と〇個コーンを通過したことを記録しておけば,自分が走った感覚で「とてもきつかったけど,〇周だった」であればペースを落とした目標に変更します。「走るペース的にきつくなかったけど,ゴールがズレていた」であれば,スタート地点を変えればよいようになります。そもそも自分で決めたペース通りに走っているのかもあるので,秒数をカウントし,ペースを身に付けることができるようにすることも必要となってきます。

 持久走の行い方について,何かお聞きになられたい方がおられましたらお気軽に御連絡ください。

 では,鉄棒の話に移らせていただきます。

 もたせていただいている学年は2年生なのですが,3年生で実践を行わせていただきました。鉄棒は「できた」「できない」が明確なので,達成感を味わいやすい学習である反面,「できなかった」が分かりすぎて運動が苦手だという意識が残りやすい学習でもあります。鉄棒の学習でよく見る風景は「逆上がり」を全員で習得しようといったものです。なぜ,こんなにも「逆上がり」が中心的に行われるか文献を調べても分かりませんでしたが,ある大学の先生とお話させていただく中で「簡単でもないし,とても難しくもない。できたかどうかが分かりやすいので練習をしてできたという達成感が味わいやすいから」ではないかという結論になりました。しかし,「逆上がり」は行い方以外にも身体的発達が大きく関わってくるものでもあると思います(鉄棒はどれもそうかもしれませんが)。なので,努力してもできなかったという結果になると,生涯スポーツに親しもうとする子どもは少なくなっていくのではないかと考えています。
 では,鉄棒の楽しさは何なのでしょう。器械運動系は,体操競技がチャンピオンスポーツとして取り扱われていると思います。そこでは,「技の難易度・美しさ・雄大さ・安定性などの観点で複数の審判員が採点し、そこから得点を算出して順位を競う競技」となっています。鉄棒は,鉄棒を使って行う運動なので,鉄棒に上がり,その上で色々なことを行い,そして下りることが一つの流れとなっています。なので,「上がる,止まる・振る・回る,下りる」をどう行うことができるかを子どもたちが楽しさとして捉えることが大事になると思います。

 そこで,今回の学習では,低学年で行った運動遊びをはじめに行いました。例えば「ツバメ」「布団干し」「くの字起こし」「コウモリ」のような動きです。そして,その動きをもとにどのようなことができるか自由にやってみていいよと伝えました。すると,「コウモリから地面に手を着いて下りる」「ツバメから前に回って下りる」「ツバメから回ってその姿勢に戻る」などが出てきました。いろんな動きが出てきましたが,「回る」という動きは中々難しく,こんなことができるよという振り返りには加わりませんでした。そこで,「いろんな動きを考えてくれたけど,副読本に載っているものに似ているものはないか?」と聞き,似ている動きを試す時間をとりました。「自分が考えたものと似ているものがある!」「こんな動きもあるんだ!やってみたい!」と進んで鉄棒を使って運動をしていました。「回る技」は中々難しく,結果的に「下りる技」になっている様子も見受けられましたが,その動きについては「下りる技」として価値付けしたり,その動きを簡単にすると回ることができることに気付くように問い返したりしました。実際の動きを見る機会がなかったので,いろんな技に挑戦している子の技ができた様子を共有することで,行い方をイメージしやすくなっていたようです。

 いろいろな動きが出てきたところで,「いろいろな行い方で,鉄棒に上がったり,鉄棒の上で止まったり回ったり,振ったり,鉄棒からピタッと下りたりすることができるか」というめあてを設定しました。子ども達は,自分ができる技やできそうな技を組み合わせて上がったり,止まったり・振ったり・回ったり,下りたりするという見通しの中,どのような組み合わせで行うかメモをし,取り組みました。組み合わせの中でできない技があると,その技だけ取り組んだり,組み合わせで成功したら新しい組み合わせを考えたりして積極的に鉄棒を使って運動していました。

 器械運動領域については,系統的に技が組み込んであるので,この学年ではこの技を身に付けなければならないという意識が指導者に働くかもしれません。このような領域では,「自分がやりたい・できそうだと思った技に挑戦した」という意識が重要になってくるように思います。そういった意識で運動に取り組んだ子は,「できる・できない」の間にある「できそう」を楽しむ意識が育まれ,様々な運動でも挑戦しようと意欲的に取り組んでいけるのではないでしょうか。技も体力ももちろん大事です。しかし,生涯スポーツに親しむ土台はそれだけではつくられないように思えます。どのようなことを意識して授業をつくっていけば,生涯スポーツに親しもうとする子どもが増えるのか,またwell-beingに向かう子が育つのか,これからも子どもに向き合いながら実践を積めたらと思います。

小中一貫教育研究発表大会
2023/12/01
 11月24日の小中一貫教育研究大会はお世話になりました。4年ぶりの対面開催となり,色々と不手際等あったかもしれませんが,御参会いただいた方々ありがとうございました。

 小学校2年生の体育科では,ボール落としゲームを提案しました。来年度,中学年となることも踏まえて,ネット型のゲームとの接続を考慮したゲームを設定しました。しかし,ボールを弾いたり,繋いだりすることは難しいのではないかと考え,キャッチ・スローを用いたネット型のゲームとして簡易化して提示しました。

 エージェンシーとの関連を踏まえ,体育科では「自分たちの活動をより楽しくしようと工夫を考えたり,その場で技能を高めようとしたりする姿」が見られるように授業を仕組んでいくことを考えました。そこで,低学年のボールゲーム領域としては,子ども達が遊びを創ることから学習を進めていけるとよいと考え,簡単なボール落とし遊びを体験させました。5人程度が輪になってボールを投げ,落とした人が負けという簡単なルールだけを伝え,遊びました。その中では,友達の足元を狙ってボールを投げる子や,近くまで行って体にぶつける子,自分の近くに投げてボールを落とす子,とても遠くに投げてボールを落とす子など様々な姿が見られました。それらすべて「ボールを落とすことができるか」ということを考えて行った姿です。しかし,「ボールを落とさせないことができるか」という観点からは,「できるか・できないか」のギリギリにはなっていないことになります。子ども達の中では,「ボールを落とすことができるか・落とさせないようにできるか」が楽しいことなのに,落とされすぎて楽しくないといった意見が出てきました。では,どういう遊びになれば楽しくなるのか?ということでルールづくりをしました(指導要領では規則となっていますが,便宜上ルールとして子どもに発問しています)。子どもからは,上のような動きを基に「ここまでの範囲に落ちたら得点になるというルールがあるとよい」といったコートに関することや,「ネットを設置して上を通すようにすれば,低いところに投げにくくなるからいいような気がする」というネットでコートを区切るルール,「誰が落としたかわからないから,チームを作って,1対1より人数を増やしたい」といったものが出てきました。出てきた意見を基に【ネットをはさむ・2分で得点が多い方が勝ち・コートにボールが落ちる,コートの外にボールが落ちる,ネットをボールが越えないと1点】というルールを共有し,次時につなげました。

 次の時間には,実際にゲームをしてみてより楽しくするために必要なことを話し合いました。コートの広さや捕球してから動いてよい歩数などを変更すればいいのでは?ということで,どれがちょうど良いのかを決めました。その中で,「全体としてこんなルールという風に決めるのはもちろん必要だけど,チーム同士の攻撃や守備の差によってルールを変えてもいいんじゃないかな」という意見がありました。そこで,点差が大きければギリギリになるようにルールの調整を行いながら,落とすことができるかどうかを楽しむゲームをしてみようと見通しをもちました。ここで一次は終わり,次時からは「どうすればボールを落とすことができるか,落とさせないようにできるか」を試行錯誤していく時間としました。

 ゲームを行う中で,「ボールを落とす」の気付きとして,「2歩動いてネットの近くに移動してから投げると落としやすい」「とる人がいないところに投げる」「フェイントをかけて前や後ろに投げる」「後ろの左や右がねらい目」「ネットの上から投げ入れるとよい」などの気付きが出てきました。「ボールを落とさせない」では,「相手コートの奥の方に投げると,相手からのボールがネットを超えない」「ボールが落ちてくるのをしっかりと見る」「ボールがどこに落ちるか予測して,動いてからとる」「ボールをとるときにしっかりと掴む」などの気付きがありました。「ルール調整」では,「相手コートを狭くしたら接戦になって楽しかった」「2歩動いてよいところを5歩にしたら,ボールを返せる確率が高くなった」「自分のコートを広くしたら,相手チームの点が入りやすくなった」などの気付きが出てきました。授業が進むにつれて新しい気付きも出てきましたが,おおよそ同じような気付きが続くことになります。
今回の授業の課題はここにあると感じました。

 成果としては,子ども達がこのゲームをより楽しくしようと考え,ルールを創ったり,調整したりしながら取り組んでいたところ。また,「どうすれば落とせるか,落とさせないようにできるか」を視点として子ども達同士で様々な気付きを伝え合うことができたことです。
 課題としては,二つあり,一つ目としては,ルールを調整したのは良かったのですが,調整した場でどのように行うのかというところにいきつかなかったことです。相手コートが広くなったから得点は入りやすくなったというのは理解できるのですが,広くなったのにボールを投げるところは前回のゲームと同じという姿も見られました。守る側も,広くなったからどういう風に守ろうといったような位置取り,作戦的な意味合いの気付きが言語化できていなかったように感じます。点差があったから調整をした,それでいいだろうというところで止まっているところを,だからどうするのか?という気付きが表出できるように声を掛けること,もしくは気付くような場の仕掛けも必要だったのかと思います。発達段階のこともありますので,どの学年でどこまで子どもが気付けるのかといったところを整理することも必要だと感じました。二つ目の課題としては,「どうすれば落とすことができるか,落とさせないようにできるか」のイメージとしてどうすればよいのかを捉えることができましたが,そこからどう動きに生かすかというつながりが薄かったことです。「人がいないところに投げると良い」と気付きはしたけど,どうすれば投げることができるかはわからずといった姿も少なくないようでした。技能を目標とするわけではないですが,楽しさに向かう中で技能が必要になり,そこを高めていきたいという様相が見られるとよいのかなと思います。岡山大学の原先生の言葉を借りると,「スーパーマリオゲームをするときにBダッシュから練習しませんよね?」ということが今回にも当てはまります。「ボールを落とすか落とさせないか」が楽しく,それをクリアしたいから投げたり,とったりの技能を高めたいというつながりが見られると理想だと思います。そして,練習の時間をとるのか,試合の中で試し,試行錯誤していくのかといったところもこれからの実践で検証できるとよいなと考えています。

 今回実践を行い,いろいろと御意見をいただいた中で,エージェンシーと教科の本質を結び付けて授業を行うことの難しさを痛感しました。エージェンシーを獲得・発揮するには,教師がもっている権限を譲渡していきます。指導要領の内容もありますし,そこから外れないよう幅はもたせますが,どのような方向に向かっていくのかが子どもに委ねられるところが大きくなります。今までの,教師が狙っているところを子どもに気付かせる流れではなくなる上で,どういった仕掛けや場,手立てが必要になってくるのか再整理していけたらと思います。

 研究大会に御参加いただけなかった方からも,御意見いただきながら研究を進めていけたらと思います。何か御意見がございましたらお気軽に御連絡ください。

つくり ためす ベースボール
2023/10/19
 8日間の教育実習が終わりました。前回のトピックスでマットを使った運動遊びの御紹介をいたしました。その後の実習生の授業も子ども達は生き生きと運動していました。
 今回のトピックスでは,ボールゲームの御紹介ができればと思います。

 ボールゲームについては,二つ前のトピックスで御説明させていただいたので,そちらをご覧いただければと思います。今回は,ベースボール型につながるゲームを行いました。
 ベースボール型は「ベースをとることができるかどうか」「ベースをとらせないようにできるかどうか」が楽しい運動だと考えています。チャンピオンスポーツを見ても,ベースをとるために,内野安打や外野へのヒットもあれば,ホームランもあり,バントもあります。様々な工夫をしながらベースをとるために運動をしています。ベースをとらせないためには,ピッチャーが打球を飛ばさせないために様々な球種を扱ったり,球威のある球を投げたりしています。打球が飛んだ際には,ベースに走者がたどり着く前にボールを転送するために,様々な技術を使ってボールをベースに早く転送しています。ベースに転送できなくても,ストライクを三回取ればアウトになったり,地面にボールを落とさずにキャッチすればアウトになったりします。また,前提としてバットを使ってピッチャーが投げたボールを打ち返します。
 
さて,上記のようなチャンピオンスポーツのルールを踏まえ,小学校ではどのようなことができるのかということになるのですが。まず,絶対に変えてはいけないものが「ベースをとるか,とらせないか」を競うということです。ここを変えるとやっていることが曖昧になってしまうこともありますし,明確すぎて子どもがやりにくさを感じてしまう原因になります。例えば,「遠くに飛ばせ 〇〇ベースボール」という単元を仕組んだとしましょう。内容の進め方を単元名から予想していただくと,「ベースボール型の運動を取り扱う」「遠くに飛ばせることが目標である」ということが読み取れると思います。一単位時間のめあては「どうすればボールを遠くに飛ばすことができだろう」という風になるでしょうか。この流れや目標が間違っているとは思いませんが,ベースボール型ゲームを取り扱う中で,「ベースをとるかとらせないか」が抜け落ちてしまうと,違う運動になってしまいます。子ども達の思考の中では,遠くに飛ばせることが目標なので,ベースをとるために行っている運動というつながりが薄くなっている様子もあるかもしれません。また,遠くに飛ばせないとできていないという感覚に陥ってしまう状況も生まれるかもしれません。プロでも全員がホームランをたくさん打てるわけではないと思います。それぞれの特徴に合うベースのとりかたを行っているのだと思います。
 
では,どうすればよいかと考えますと,「ベースをとるか,とらせないか」を競う運動だということをしっかりと抑えることです。そうすると,子どもの意識としては,「ベースをとるためにはどうすればよいか」→「相手がボールをベースに送るのを遅くできればよい」→「どうすれば遅くできるか」→「捕りにくい球を打つ」→「相手がいないところにボールを打てるとよい」というふうにつながっていくのではないかと思います。この中で子どもの意識は様々に派生していくと思いますが,大まかに流れを捉えておくことが指導する立場としては大切だと思います。これは,「この流れにならないといけない」と思うのとは全然違います。なので,環境を準備する上でこの大枠からずれないようにというのが大切になってくるのだと思いますが,そこに持ち出すのが「何を競っている運動なのか」ということになるのではないかと思います。その中で,ベースをとるかとらせないかをボールを蹴りながら行うのであればキックベースになるし,アウトの方法を集まることを条件にすればあつまりっこベースボールのようなものになるのです。何を変えてよくて,何を変えてはいけないのかということをしっかり認識することが大切だと毎回単元を考える時に感じています。

 前置きが長くなりました。今回の単元の流れについて御説明します。単元は全6時間で行います。1次は2〜3時間で,何を競うのかを確認し,規則を確認したり,規則を行いやすいように変えたりしていきます。2次は,自分たちに合うような規則の中でどうすればベースをとるかとらせないことができるかを試行錯誤していきます。こちらが示した最初のゲームとしては,攻めはボールを投げてベースを目指す,ベースは打つ場所から7m程度のところ。守る側は,ボールを捕って二つ準備しているフープに集まります。攻守交替はそれぞれのチームで全員が投げたら。試合は互いに攻撃をしたらになりました。ボールを投げた攻めが先にコーンにたどり着くのが先か,ボールを捕ってフープに集まるのが先かを競います。

このルールで行うと,攻めがかなり有利な状況になりました。互いに点がとりやすいので,アウトにできずゲームが終わっていったような形です。1時間目の授業の終末に「ゲームはどう?変えたいところがあるかな?」と聞いたところ,「ゲームが攻めに有利すぎる。もう少し守りやすいルールにしないとアウトがとれない」「フープの数が二つだと集まりにくいから,増やしたい」「上に投げ上げたら時間を稼ぐことができるからアウトにするのが難しい」「ボールを置くように,すぐ近くに落とされるとアウトはとれない」といった気付きがでてきました。どうすればよいか子ども達に聞いたところ「コーンに着くのを遅くするためにコーンを遠くする」「フープの数を三つに増やして,集まりやすくする」「バウンドせずにキャッチしたボールはアウトになる」「打つところから2mくらいで止まったボールはやり直しにする」といった規則の工夫を行いました。

2時間目にそのルールで行ったところ,まだコーンが近いということで,コーンをもう1m遠くしました。また,終末で気付きを聞いたところ,投げるのが得意な人の時はコーンを遠くしたり,苦手な人はコーンを近くしたりしてベースをとれるかとらせないかをギリギリにできるとよいという発言が出てきました。しかし,別の子から,「誰を遠くするか近くするかを決めるのが難しそうだし,毎回そうすると時間がかかってしまうからとりあえずやめた方がよいと思う。それよりも,どうやって守るか,どうやって攻めるかについて工夫してみたらどうか」という意見が出てきたので,「次の時間からは,この規則の中でどうすればベースをとるかとらせないかを考えてみよう」ということで2時間目は終わりました。

3時間目からは,「どうすればベースをとれるか,とらせないようにできるか」をめあてに学習を進めました。一時間の流れは,めあての確認→ゲーム→振り返りです。この中で指導者は活動を見ながら「どうしてそこを狙ったのか」「今,どうしたらアウトがとれたのか」等を聞きながら回ります。3時間目の振り返りは,どんなことに気付いたかということで自由記述を行いました。「相手がいないところにボールを投げるとアウトになりにくい」「ボールを浮かして投げると直接キャッチされてアウトになりやすいから,地面につくように前に投げるとよい」「守りの時には,直接キャッチができるように場所を決めるとよい」「どこのアウトゾーンに集まるかがバラバラでアウトにならなかった」等の振り返りが出てきました。そこからまた「どうすればよいか」ということで次時につなげました。そこからは「どう動くか」「どんな規則の工夫をするか」を合わせて聞いていきました。

 今回の内容では,今年度目指したい姿としての「自分たちの遊びをより楽しくしようとする姿」が1次でしかほとんど見られませんでした。途中で出てきた「それぞれの個人に合わせた規則の工夫」といったところを広げて「それぞれの対戦相手や自分たちのチームに合わせた規則の工夫」といったところを子ども達が見出していけると,この先どのようなところで運動するときも自分に合うようなところで行ったり,自分に合うように工夫したりすることができるのではないかと考えました。11月の研究大会では,そういった姿がお見せできるとよいなと考えています。研究大会の御参加はホームページに二次案内を載せておりますので,そちらを見いただければと思います。

マットで遊ぶ 落ちずに動け!
2023/09/28
 まだまだ暑い日が続いています。少しずつ暑さが和らいできたかと思うと,またじんわり暑くなってきたように感じます。
 先日から,後期の教育実習が始まっています。感染症がピークの時は各クラス1名ずつでしたが,制限も緩和され,2名の配属になりました。以前は各クラス4名配属され,実習棟に宿泊していたようなので,まだまだ完全に元通りとは言えませんが,休み時間に遊んだり,給食を食べたりと元通りになりつつあります。

 2名のうち1名が「器械・器具を使っての運動遊び」のマット運動で授業を行うので,単元に入りました。この領域は正直言うとやりにくいと感じています。「技ができた」という楽しさや喜びを味わわせるというのは分かりますが,「技ができるようになるにはどうすればよいか」と目標を設定すると,必要感もなければ,苦手な子にとっては少し苦しい内容になっていくのかなと感じます。以前は,「技ができるように」するために,教師が「どのような場所を準備するか」「いかに効率的に技を身に付けさせるか」ということを研究するのが中心だったように感じます。私も「ここに足が届くようにボールを吊るして,何度も練習すればできるようになるのではないだろうか」とより効果的な技の身に付け方を考えていました。しかし,そこで子どもが本当にマット運動を行う「楽しさ」を感じているのか?と疑問を感じました。

 そこで,いつものようにマット運動の本質的な楽しさは何なのかということを捉えなおしてみました。マット運動の起源は,宗教的なもの(表現に近しいもの)や職業として新たな技をどんどん開発していったことだと文献から捉えました。
現在の体操競技を見てみると,より難易度の高い技を行ったり,新たな技を開発したりしている様子が見られます。体操競技は点数をつけますが,技の種類や出来栄えを採点することとなっています。そうすると,宗教的行事で「美しく表現をする」ことや,職業的なことから「新たな技を開発して見せる」ことを目指していくことが現在の体操競技にも脈々と受け継がれているのかと思います。

では,体育の学習にどうつなげていけるかというところですが,2年生の学習において「より技を美しくおこなうために」「新たな技を開発しよう」という目標は実態にそぐわないですね。これは,ゲーム領域においてオフィシャルルールでゲームを行わないのと同じで,マット運動の行い方を簡単にしていく必要があると思います。
そこで,全体として場を準備し,「それぞれのマットのこっちからあっちに,マットから落ちずに移動することができるかどうか」を目標としました。これは,例えば細いマットの上を移動するのであれば,前転がりで横に崩れてしまうと落ちずに行くことができません。これは「美しく」につながっていくのですが,子ども達の意識としては「落ちないようにするにはどうすればよいか?」という風になります。
 
ここでは,長いマットをつなげた場や壁にマットを引っ付けた場,細いマットをつなげた場等を準備しました。それぞれのマットの開始位置に「前に転がっても」「後ろに転がっても」「手と足をつきながらでも」「壁に足をつきながらでも」「手と足を伸ばして転がっても」の条件を付けました。子ども達は「どうしても前転がりでマットから落ちる!」「壁に足をつけながら進みたいけど,すぐ床についてしまう」等,様々に気付きを口に出しながら行っていました。途中で一度集合し,「どうしたらもっと楽しくなりそう?自分で工夫した遊び方はある?」と問うと,「(壁に足をつけながら移動する場で)皆,下を向いて壁に足をついていたけど,上向きでやってみるのもいいのではないか」という壁倒立につながる遊び方や,「手と足をつけるところで,ブリッジで移動するのも楽しそう」という工夫も出てきました。「ブリッジが難しかったらどうしようか?」と問い返すと,「手を置く位置を頭の先ではなくて,肩の下に置くとやりやすいと思う」と返ってきました。他にも工夫が出てきたので,「出てきた工夫を試しながらまた遊んでみよう」ということで遊びを再開しました。共有した工夫を試し,遊び,本時の最後に次時からどのようなコースをつくって落ちないように移動するかを問いました。技名を知っている子もいるので側転やバク転という意見も出てきましたが,そこにつながる遊びをつくっていけるとよいかと思います。

次時から実習生の授業です。子ども達と,どのような楽しいマット運動の学習をつくってくれるか楽しみにしたいと思います。

おまけゲーム
2023/09/14
夏休みが終わり,学校に元気な子ども達の声が帰ってきました。熱中症への不安もまだまだ続いております。しかし,体育を全くやらないというわけにもいきませんので,熱中症指数をしっかりと確認し,水分補給をこまめに行いながら学習を行っております。

いつも,長々と研究のことを書かせていただいていますので,今回はこんな遊びができるというものを簡単に御紹介できたらと思います。

領域で考えるとゲーム領域か体つくり領域で取り扱えると思いますが,取り扱う運動からどういった方向に進めるかは過去のトピックスも参考にされながら行ってみてください。

内容としましては,ゲームセンターに置いてあるホッケーを応用したものです。海外等の運動遊びでよく行われているようなので,気になる方はそちらをご覧ください。マーカーかコーンを使いゴールを作ります。ボール蹴りゲームと同じでゴールの幅はおおよそを示し,あとは自由に変えても構いません。ボールの代わりにマーカーを使い,相手ゴールに入るように滑らせます。このゲームでは,その際の姿勢がとても大事になります。腕立て伏せのような姿勢になり,身体を支えます。床についているどちらかの手でマーカーを止めたり,滑らせたりします。腕立て伏せのように手とつま先だけだとかなりきついので,膝までつけてよい,腰までつけてよいのように,目の前の子どもの身体的な成長に合わせて変えてみてください。プランクのように肘までを付けて行ってもよいと思います。いざ,始めてみるとどこに滑らせるか?どこに飛ばしてくるか?を探りながら何度も攻防に取り組んでいました。
その後,2人組にしてゴールを広くしたり,4人で4方向のゴールを作ったりしながら取り組みました。人数やゴールの数,広さ等を変えると新しい気付きが生まれてきます。

ちなみに,私も子どもと少しやったのですが,かなり汗をかきますし,全身の負荷も感じます。

今回ご紹介した内容は,低学年ゲーム領域として取り扱うことができると思います。もしくは,体つくり運動の力試しの運動遊びの一つとして取り扱ってもよいと思います。中・高学年の内容にフィットするかが難しいので,学級のレクリエーションとして行っても楽しいと思います。準備するものも少ないので,ちょっと時間が余った時にもすぐ行うことができます。是非,一緒に遊んでみてください。

エージェンシーとゲーム領域
2023/07/31
 夏休みが始まり,8月が近づいてきました。本校は前後期制をとっています。プールが雷注意報で入れないとなっても,今度は熱中症指数が高く体育もできない状況です。今回は,今年度の研究大会に向けてプレ的に行ったゲーム領域の学習について御紹介できればと思います。ただ,熱中症指数が高く,体育の学習ができなかったので,単元が途中までしか進んでおりませんので御了承ください。

 前回のトピックスでも御紹介しましたが,今年度もwell-beingにつながる学び,エージェンシーの育成に向けてどう遊びを仕組んでいくかということを研究しております。前回のものとも被るところがあるのですが,ゲーム領域については,「子どもが遊びを創り,その場の攻防を楽しむために技能を高めていく」という流れがエージェンシーに沿っているのではないかと考えております。

 具体的には,「遊びを創る」場面で,自分たちがより楽しめるような遊びを創る。ここでの子どもの意識としては,「どんなゲームにしたらよいか」というものになると思います。この中に様々な規則の工夫が詰め込まれており,自分たちが楽しいと思えるものにするために試行錯誤をします。エージェンシーの内容で考えると,「自分たちが楽しいと思えるようなゲームにするために,どのようなことが必要かを考え,試し,その遊びを振り返る」というような流れに子どもの思考は働いていくのではないかと捉えています。

 そもそも子どもは,遊ぶことに関しては超一流なので,こちらが簡単な場を用意するだけでも勝手に楽しいように変えていく姿が見られると思います。ここで難しいのが,自由に遊びを創ることと授業の内容が一致するのかということ,逆に,完成されたチャンピオンスポーツのルールを知っている子が,そのようにゲームを創っていくことも不安材料としてあるのではないかと思います。

 子どもが遊びを創る際に必要なことは大きく二つです。「この遊びがみんなにとって楽しめるものになりそうかという意識」「どのようなことを変えて遊びを創ってよいのかの共通認識としての視点」です。一つ目は,前段でも述べたように,チャンピオンスポーツを提案したときに,「それはみんなが楽しめるのか?そもそも,一緒に運動している人が楽しんでいるか?」ということを振り返りながら運動することにつながります。子どもの中では「これは難しいよね」「得点が入りにくいな」「ルールが難しすぎてよくわからないな」といった感想がでてくるのではないでしょうか。二つ目は,なにもかも変えてよいわけではないということです。例えばゴール型でサッカー系を行う際に,ボールを蹴らなくてもよいことになると前提条件が崩れます。また,ゴール型なのに,蹴るということが共通しているからとキックベースになるとベースボール型になってしまいます。まず,外してはならないことは何なのかということを抑える必要があります。そのため,試しのゲームや最初に出合う運動の場からの振り返りがとても大切になってくるのだと思います。ここで子ども達同士や教師との認識のずれが生じると,遊びが多方面に広がりすぎてしまう恐れがあります。

 前置きが長くなりましたが,今回行った実践についてです。今回はゲーム領域のボールゲーム系,ゴール型につながる遊びで「ボール蹴りゲーム」の単元です。

 この系統の面白さというのは,「ボールをゴールに入れることができるかどうか」です。また,ボール蹴りなので「足でボールを操作して」ということが加わります。単元最初の導入段階で,どのように運動と出合わせるか迷いました。

今回は遊びを子ども達が創っていくところにエージェンシーの獲得・発揮が見られるとよいなと思ったので,最初の場はかなり簡単なものにしました。体育館で学習を行いましたが,コーンをゴールのように見立てて10セット程置きました。そしてボールは意図のないようにバラバラに散らしました。子ども達の様相としては,「ボールをただ蹴っている」から「意図して何かにボールを当てようとしている」になりました。しかし,コーンにボールを当てるのは中々難しかったようで,もう少し広い目的にボールを蹴るとよいという思考に至り,「コーンとコーンの間にボールを蹴る」という遊びになりました。この間教師は子どもが遊んでいるところを行ったり来たりしながら「どうやったら成功?」「難しそうだなあ。工夫できる?」「簡単すぎるのか。難しくできる?」等の声掛けを行いました。全体としてコーンとコーンの間にボールを蹴って入れる遊びを見出したところで集合させ,どんな遊びになったかを問い,共有しました。この後からがエージェンシーを獲得・発揮する姿が一番見られるのではないかと思います。

 ここでいかに視点を揃えておくかというのが,子ども達が自分のために遊びを行うのか,他者という意識も含めて遊びを行うかが変わってきます。自分はしっかりと抑えていなかったので,子どもは遊びを工夫することは積極的に行っていたのですが,自分のためというところから抜けきれない様子がありました。ここで共有する視点は,「運動の場の変えてよい要素」「この先ゲーム(学習)がどうなっていくのか」ということです。運動の要素についてはしっかりと抑えたのですが,子ども達はこの先もずっと工夫をし続けていくだけなのかと捉えていたように感じました。なので,自分たちでつくったグループでひたすら工夫をし,技能を高めようとする姿は見られたのですが,全体でゲームの共有をする際には他グループの意見や,他グループの様子を積極的に知ろうとする姿は少ないように感じました。自分たちのした工夫や創ったゲームを他の人に共有し,「他の人達も楽しめるようなものにするためにはどうすればよいか?」という意識を生むことで,多面的に運動を捉え,新たな方向性で変革に向かっていけるのではないかと感じました。

 しかし,この中で子ども達も遊びをどう楽しくするか?という面白そうな気付きはたくさん出てきていました。共有したなかで,単元の最初の大きなめあてとしては,「コーンとコーンの間にボールを入れる遊びをより楽しくするためにはどうすればよいか」となりました。ボールとコーンが置いてあっただけの場から,子ども達が楽しくしようと考え単元を練り上げていきました。このめあてを設定した後に,「簡単に入れられるから,コーンの幅を小さくしたらいいのではないか」や「守りを置いてみたら入りにくくなるし面白そう」ということで,色々試してみました。すると次は,「守りを置いたらコーンとコーンの間が狭すぎて全然ボールが入らなかった」や,逆に「コーンとコーンの間が広すぎて簡単にボールが入ってしまう」という意見も出てきました。ここからまた全体で共有し,どうすれば楽しくなる?と問い,全体の規則を決めていきました。

 この中で,子ども達にはOPPAで振り返りを行わせました。振り返りの視点としては,「学習を行う中で困ったことや難しかったこと」を視点に振り返ろうねと伝えています。運動の内容だけでなく,グループをつくったときの活動の仕方や,体育館のハード面に関することなど様々な振り返りがでてきます。こういった振り返りを基に,子ども達がどうすれば解決できるか?と様々な方向に課題解決の視点を向けられるとよりエージェンシーが育まれるのではないかと感じました。

 今回の実践では,エージェンシーを育成する授業モデルの欠片は見えたように感じます。しかし,視点を共有することや,振り返りをもっと生かせるよな場面づくり等,色々な課題が見えたのも事実です。11月の研究大会では,こういったところをしっかりと生かしている子どもの姿が見えるように実践を積んでいけたらと思います。また,御興味があればよろしくお願いいたします。

水泳領域の遊び
2023/06/30
梅雨がまだまだ続いていますね。雷注意報と曇天のせいで中々プールに入れない日々が続いております。全校の子ども達から「なんで僕らの時だけ雷注意報が出るんだ!」と声が上がっていますが,ほぼ毎日出ているのでどうしようもないなあとも思います。プールが始まったら突如雷注意報が出だすのは季節的なものでしょうか。

 さて,11月の研究大会に向けて,体育の学習を日々続けています。ほとんど全教科指導をさせていただいていますので,体育だけでなく全教科でエージェンシーを育むことを意識しながら授業をしているのですが。体育の面白さ,エージェンシーの育成,体育の本質等をいろいろと考えていると考えがごちゃごちゃしてきまして,体育ってどんなことだった?と迷子になった期間がありました。

 そこで,本校の研究協力員の先生とお話をしていて,ある大学の先生とオンラインで相談をさせていただく機会がありました。体育の研究をされている方ですが,体育だけでなく社会全体のことを考えており,まさにエージェンシーといったことを体現されている方だなと思いました。

 具体的には,今考えている体育の授業について相談をさせていただいたのですが,自分の体育をしっかりと振り返る良い機会にさせていただきました。いつも私は「技能」や「動き」が先ではなく,「運動の楽しさ」が先と考えています。しかし,その先生に相談し,助言をいただく中で,指導者が身に付けさせたい動きが目立ちすぎているということに気付かせていただきました。「子ども達が『自由性』『創造性』を味わうなかで」という論の上で,結果的に技能が最上位目標になっていることに気付きました。「もっと運動の面白さを前面に出してもよいのでは?」ということで,実践を基にいろいろとお話をいただきました。とても勉強になり,水泳の学習やボール蹴り遊びの学習について実践をしてみたので,水泳領域について御紹介できればと思います。

 低学年の水泳領域は,他の領域と同じように「遊び」となっております。目標等は指導要領を御覧になっていただければと思うのですが,低学年2年目になると一周回って「遊びって難しいなあ」という感覚に陥っています。しかし,その運動の楽しさ(特性も含め)をしっかりと味わわせることをねらいとして,水の中でのいろんな動きが身に付いていくような学習にできればよいということを気付かせていただきました。

 まず水泳領域の面白さとしては,低学年では「水の中で,いろんな動きをしながらこちらからあちらにたどり着く」ということだと感じます。なので,動物になりきって動くというものがメジャーな活動として行われるのだと思います(その大学の先生に見せていただいた実践を後追いしたものになりますが)。プールの中にビート板,トラバー,フラフープ等を順番に浮かせました。まずはビート板,子どもの動きとしては歩きながらビート板をよけて進みます。スイミングを習っている子はどんどん泳ぐ子もいます。次にフラフープを浮かせました。軽いものは浮きますし,おもりが部分的に入っているものは水の中に立ちます。子ども達は,歩いてよけるから水に潜って進むという動きに変わっていきます。顔をつけるのが苦手という子も鼻をつまんで少し潜ってみたりしていました。ここで一度宝取りの要素も取り入れ,ビート板やフラフープをよけながら宝を取る活動にしました。すると,水中を進むということに気付いていない子も,歩くだけではないんだという気付きを得ているようでした。最後にトラバーを浮かせました。これは,浮かせ方にもよりますが,歩いているだけではよけられません。トラバーがある状況で進んでいくには違う動きをしなければならないのです。イルカのようにトラバーの上を飛び越える子,トラバーの下を潜りながら進む子,少しだけ体を水の中に入れて進む子等,様々な動きを見出している様子が見られました。ここで,子どもたちの中には「どうやったら,物をよけながら水の中を進めるか」という問いが前提になっています。なので,教師から「どんな動物の真似をしたらいいかなあ」と問うと,「ペンギンなら潜ったり歩いたりできるからいいかも!」「イルカなら水の中を進めるから何にもぶつからなそう」「カニみたいに潜ったりしながら進むのもいいね」等の発言が出てきました。動物の真似の活動も,こうして水泳領域の面白さを十分に味わわせてから行うと子どもの中での意味付けが変わってくるんだなと感じました。

 他の領域においても,その運動の面白さというところをしっかりと大事にし,そこからの子どもの疑問や思い,願い等を問いに昇華していくと,子どもは自分からどんどん動きを見出したり,工夫を考えたりするのだろうなと思いました。ボール蹴り遊びについては,別機会にご紹介できたらと思います。ボール蹴り遊びは,「子ども中心に遊びを作るって簡単じゃないな」編です。反省も交えながらご紹介できればと思います。

体ほぐしの運動遊び
2023/05/16
 今年度が始まり,一か月が経ちました。昨年度と同様に低学年を担当しておりますので,「遊び」の意識は変わらず体育の学習を作っています。
 
今回のトピックスは,4月始まってすぐに行った「体ほぐしの運動遊び」について御紹介できればと思います。

『体つくりの運動遊び』は「体ほぐしの運動遊び」と「多様な動きをつくる運動遊び」の二つで構成されています。「多様な動きをつくる運動遊び」は,昨年度の研究協議会で提案をさせていただきました。トピックスをさかのぼっていくと概要もありますのでそちらをご覧ください。「体ほぐしの運動遊び」については,年度初めに実施される学校も多いのではないかと思います。目標としては,「手軽な運動遊びを行い,心と体の変化に気付いたり,みんなで関わり合ったりすること」となっています。難しいことは書いてありますが,この領域の私の捉えとしては,年間を通して運動をすると楽しい気持ちになったり,友達と関わったりすることもできると気付くきっかけになればと思っています。なので,どのような運動遊びを取り扱ってもよいと思っています。しかし,そこで関わりが生まれたり,運動をすることが楽しいと感じられるような手軽なものを取り扱うことが必要です。

今回の時間は,学年2クラス合同で体育を行いました。取り扱う運動も,特に目新しいものというわけではなく,「運動量が確保されながらも楽しいもの」「友達と関わりながら行えるもの」「競争でもよいが,その特性が焦点化されすぎないもの」くらいの大まかなイメージで考えました。取り上げた運動遊びは「ペアストレッチ」「じゃんけん列車」「フープつなぎ」「新聞紙リレー」です。
「ペアストレッチ」は,単純にストレッチをするわけではなく,それぞれ他の遊びを取り入れながらストレッチをすると楽しそうという意見から,ストレッチとじゃんけんを組み合わせて行いました。何か遊びを組み合わせたいなと思った時は「じゃんけん」が一番取り入れやすいと思います。
「じゃんけん列車」は御存じの通りです。「フープつなぎ」は,手を繋ぎ,手を使わずにフープを通していくというものです。手を繋いで行いますので,自分が動きたい動きを友達に伝えながら協調して動くことが必要となります。「みんなで関わり合う」という点で,「じゃんけん列車」をする中で,友達と二人でじゃんけんをするよりも,人数が増えるとドキドキする回数が増えるといった感想や,みんなで肩をもって歩くと勝手な動きをした時に動きにくくなるといった気付きも表出されます。「フープつなぎ」でも,動きに関して同じような気付きが出てきますが,早くつなぎたいという思いを基に,どのように友達と協力するかといった方向性を確認するきっかけにもなると思います。
「新聞紙リレー」は,新聞紙を手を使わずに落とさず走るといった遊びです。どのように新聞紙を落とさずに走るかもありますが,そこまで難しくないです。ここも,友達とどうやったら新聞紙落とさずに走れるかな?と問うと,話し合ったり,実際に新聞紙を使ってやってみたりする姿が見られます。最初の体育の授業は,年間の指針になると思います。体育の授業はどのように学習をしていくのか,友達とどう関わるかといったことが子どものなかに気付きとして芽生える運動を仕組めるとよいなと感じました。

新年度よろしくお願いいたします
2023/04/13
 今年度も体育科を担当させていただきます。木田 雅大(きだ まさひろ)と申します。どうぞ,よろしくお願いいたします。2年生の担任をもたせていただきます。

 新学期が始まりました。もちあがり学年ということで,昨年度,研究協議会で発表させていただいた「遊び」「well-being」「エージェンシー」をさらに深めた研究にできたらと思っています。
 
 御存じの通り,小学校の体育科の指導要領は2学年ごとのまとまりで示されています。では,今年度,2年生の実践を行わせていただく上で,昨年度の1年生の実践と何が違うのか?というところを御説明できるように研究を進めていけたらと思っています。目標や内容項目は同じですが,3年生の学習に向けて,どのように差別化ができるのでしょうか。また,それが「well-being」「エージェンシー」とどのように関連するのでしょうか。

 子どもが「遊び」を楽しみながら,学習指導要領の目標である「生涯に渡って心身の健康を保持増進し豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力を育成する」ことができるように研鑽をつんでいけたらと思います。

 今年度も,どうぞよろしくお願いいたします。

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